アイツが天国から還ってきた 夢幻のマッドマックス Millennium編

The goal of all life is death. 凄惨な事故による心肺停止状態から仮初めの命を与えられ、アイツが天国から還ってきた。アイツは夢か幻か?だがアイツは残り少ない時間を自ら削って死に急ぐ。これはアイツの命が燃え尽きて灰になるまでの記録である。この命の終焉の刻まであと僅か・・・全ては時の中に・・・

九州チャレンジサイクルロードレース#9 【サヨナラの予感 マッドマックス炎の友情】

 試走の時に気づいたことですが、コース上のあちこちに布団が巻き付けられたガードレールや電柱、木等があるのです。

 これは何かというと、危険個所に激突した場合の緩衝材としての役割を果たす目的で取り付けられているのです。

 例えば、レース中に前走者のドラフティングに入って走っている場合、急に道幅が狭くなった時に前走者の動きに対応しきれずにコースアウトしてしまう可能性があり、そこに電柱やガードレールの先端があるとスプラッター映画になってしまう恐れがあるため、こうした安全対策が行われているのです。

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 感動の再開を果たしたマックスとトムとジェリーの3人が川沿いをローテーションしながら走ります。

マックス「ホームストレートの出口でスタッフから先頭とのタイム差は3分半だと教えてもらったぞ!ひたすら全開走行を続けないとDNFになっちまう!というわけでペースアップだ!!」

トム「平坦なら任せろ!マックス!ただし俺は上りは遅いから、構わずに置いて行ってくれよ!

マックス「何言ってんだよ、トム!最後まで一緒に走ろうぜ!」

 しかし、ここで異変が起きます。ジェリーが先頭を牽けなくなり、ドラフティングでも明らかに追走が厳しくなっているのです。どうやら激坂の後、トムとローテーションしてここまで追い上げた時に脚を使い果たしてしまったようです。

ジェリー「マックス、トム・・・スマン。俺はここまでだ。もう列車についていけない。先にいってくれ」

トム「頑張れジェリー!」

マックス「一緒に行こうぜ!ジェリー!」

ジェリー「いや、さよならだ。俺のためにお前たちまでDNFにさせるわけにはいかない・・・行け!トム!マックス!」

 少しの沈黙の後、マックスとトムはジェリーの気持ちを受け止めて先に進むことにしたのである。

マックス「ありがとうジェリー・・・お前の気持ちは無駄にはしないぞ」

トム「ゴール後にまた会おう、ジェリー!」

ジェリー「ああ!またな!」

こうしてトムとマックスからジェリーは離れていったのである。やがて、ジェリーの姿は見えなくなってしまった。

トム「マックス、さっき言いそびれたんだが・・・ガティの事なんだけどさ」

マックス「ん?ガティがどうした?」

トム「実はさ、俺がガティと接触してガティのバイクにダメージを与えてしまったんだ」

それでガティに追いついたとき、トムの様子が変だったのだ。確かにガティのハンドルは曲がっていたように見えた。

マックス「・・・そうだったのか・・・それは・・・運が悪かったな」

トム「ガティには悪い事をしたよ。後で謝りにいかないとな

 素直に自分の非を認めて謝りに行くと言うトム。簡単そうに思えて、中々できることではないと思う。トムは実に爽やかな奴だなと感心してしまった。

マックス「フフ、ゴールしたら、ゆっくりと謝ってこいよ、トム!そのまえに、まずDNFを回避しようぜ!全力でな!」

トム「おう!行こうぜマックス!」

 そこからの平坦路は更にペースアップして全速力で走り続けるトムとマックスであった。基本的にローテーションしているのだが、トムが率先して先頭を牽こうとしてくるのである。マックスが未だ牽けるのにトムが強引に追い抜いて先頭交代をしてくれるのだ。

マックス「おい、トム!牽いてくれるのは嬉しいが、それではお前の体力が持たないぞ!俺の後ろに付け!」

トム「良いんだよ!平坦は俺に牽かせてくれ!ただし、俺が牽くことができるのはこの先の激坂の前までだ。そこからは俺を置いて先に行ってくれよ、マックス!」

トムは自分の身を犠牲にしてでも俺を先に行かせようとしてくれている。

マックス「何言ってんだよトム!ここまで一緒に走ったんだ!一緒にゴールしようぜ!

トム「気持ちは嬉しいが無理だ。俺は坂が苦手なんだから、先に行けって!マックス」

そうこうしているうちに、問題の激坂がやってきた。

マックス「トム!坂は俺が牽くからな。俺のラインをトレースしてなんとかついてくるんだぞ!」

トム「しょうがないな・・・できるだけ付いて行くよ!でも遅れたら待たずに行けよ!

そしてマックスとトムのヒルクライムが開始された。

激坂の前半、トムはマックスの後ろを付いてくる。

マックス「何だ!トム、登れるじゃないか!その調子だ!付いて来いよ!」

トム「・・・」

トムは無言でペダルを回し続けている。

激坂の中盤になると斜度がさらにキツクなってきた。トムのペースが少し落ちてくる。

マックス「いや~この坂キツイな、トム!もう少しの辛抱だ!頑張れ!トム!」

トム「・・・・・・」

どうやら会話する余裕がないようだ。

激坂の終盤、斜度が最もキツクなったところでトムがスローダウンしてしまった。

マックス「トム!このコーナーのイン側は斜度がさらに厳しいぞ!アウトだ!アウト側を走れ!俺のラインをトレースしろ!」

トム「・・・・・・・」

マックスの言った通り、アウト側にラインを変更してなんとかペダルを回すトム。そしてついに頂上に辿り着いた。

マックス「何だ登れるじゃないか!トム!さあ、もう登りはないぞ!行こうぜ!」

トム「・・・・マックス・・・今ので俺の脚は売り切れて動かない。俺に構わず先に行ってくれ・・・」

マックス「ここまで一緒に来たんだ。最後まで俺と一緒に走ってくれよ、トム

トム「ダメだ・・・俺のせいでお前までDNFにするわけにはいかない・・・頼むマックス・・・先へ行け

マックス「・・・・トム・・・・」

 マックスはトムに手を振ってサヨナラすると・・・前に向き直りエアロポジションをとって超高回転でペダルを回してトンネルに突入する。

マックス「ありがとう、トム。お前の気持ちは無駄にしないぞ・・・

そしてトンネルを抜け、バンジージャンプ橋を渡り、ホームストレートへ戻ってきたマッドマックス。

トムとジェリーの友情に支えられ、ここまで走ってきたマックス。2人のためにも、DNFになるわけにはいかない!

 マックスは更にケイデンスを上げ、全開でペダルを回し続けるのであった。