アイツが天国から還ってきた 夢幻のマッドマックス Millennium編

The goal of all life is death. 凄惨な事故による心肺停止状態から仮初めの命を与えられ、アイツが天国から還ってきた。アイツは夢か幻か?だがアイツは残り少ない時間を自ら削って死に急ぐ。これはアイツの命が燃え尽きて灰になるまでの記録である。この命の終焉の刻まであと僅か・・・全ては時の中に・・・

第35回大分県チャレンジサイクルロードレース 私の命あるうちに・・・#5

【LOVE】

 マッドマックスのカテゴリーは15周回で、序盤は情報収集しながら集団に付いていくように指示してある。そしてレースは中盤に。

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「どうだ?マックス。何か気付いたことはあるか?」

「妙だな・・・スプリンター系の選手が前にいるんだが、下りのコーナーでそれほど離されない。何か企んでいるのか、それとも・・・」

「マックス、それはさっきの落車を皆みていたから、下りコーナーのツッコミが甘くなってるんだ」

「なるほど。それならまだやりようはあるな」

「ああ、何度も言うがお前には失うモノなんて何もないからな」

「任せろ相棒(笑)」

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 レース中盤まで、非力なマックスは離されることなく先頭集団で良いポジションをキープしている。落者を目の当たりにして下りコーナーのツッコミが甘くなっており、立ち上がりでもなんとか付いていくことができる。

 しかし、このままゴールスプリントに持ち込まれたら小柄で非力なマッドマックスに勝ち目は無い。

 残り5周回の時に動きがあった!!集団が一気に加速してポジション争いの緊張が一気に高まった!アタック来るか!?

「マックス!アタック来たら逃がすなよ!」

「了解!まだ脚は残ってるぞ。逃がしはしないさ(^_^.)」

と、思ったらアタック失敗でまた集団は元の状態に戻る。やれやれだぜ・・・。

この時である。私の頭に作戦が浮かんだのは。

「マックス、残り2周回目で逃げろ」

「おい、正気か?2周回残してって・・・俺が2周回も残して逃げ切れるとでも思ってんの?」

「無印ジャージ作戦で行くぞ。いいか?残り3周回の下り区間で前から5番目くらいにポジションアップしておけ。そして最終コーナーを立ち上がったらアウトから一気に加速して先頭に出ろ。ただし!「ド素人が残り2周回なのにファイナルラップと勘違いしてポジションアップしたな(爆笑)」というように見せかけろ」

「ど、どうやって?難しすぎるだろ、その演技」

「大丈夫だ。そのための根回しをスタート前にしただろ?信じろよ。私の無印ジャージ作戦を」

「わかったよ。失うモノは何もない!だな?」

「ああ、その後は第1コーナーまで泳がせられる程度の距離を保てよ。全力で逃げるのがばれると追いかけてくる。泳がされているフリをしろ。そして!第1コーナーを曲がれば集団からお前の姿が消える!そっからは全速力で逃げ出せ!いいな!リードを広げれば逃げ切れる、俺を信じろ!」

「わかった。信じるぜ。相棒」

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 そして残り2周回。私の指示通り最終コーナーを立ち上がってからスルスルと先頭に出てそのまま差を広げていくマッドマックス。

 さらに、絶妙な距離を保って「泳がされているフリ」をするマックス。お前本当に演技上手いな(笑)

 案の定、メイン集団は追ってこない。ド素人の温泉ジャージが前に出たが、あんなのは放置して、ゴールスプリントに備えた牽制・ポジション争いに専念する大分選手団。

場内アナウンス「おっと、ここで1名が逃げに入りました。あのゼッケンは・・・温泉同好会のマッドマックス選手です」

 第1コーナーを曲がっていくマッドマックス。しばらくしてメイン集団も第1コーナーへ。

大分選手団「温泉ジャージが・・・消えた!?」

 そう、メイン集団の死角に入った瞬間に全速力で逃げ出したマックスはすでに第2コーナーも曲がって降りセクションに入っていたのだ!

場内アナウンス「ここでマッドマックス選手が一気に差を広げた!完全に逃げに入りました!」

 メイン集団が第2コーナーを曲がって見た光景は・・・フルームばりにトップチューブに乗っかったダウンヒルポジションで逃げるマッドマックスだったのです!その光景を見た大分選手団は、この時初めて温泉同好会ジャージに油断してマッドマックスに騙されたことに気づいたのです。その瞬間、大分選手同士の牽制をやめて、一致団結してマッドマックスを追走します!!

 

場内アナウンス「マッドマックス選手が最終コーナーを立ち上がり!ついにファイナルラップ!!!だが!!その真後ろにはメイン集団が猛烈な勢いで追いすがっている!!!逃げ切れるか!?温泉同好会マッドマックス!!」

 

 まずいな。追いつかれる。マックスにペースアップを指示しないと

「マックス!逃げろ!」

「現在進行形ですが何か?」

「全力で逃げろ!」

「だから全力で逃げてるだろ」

「大分選手団がお前に騙されたことに気づいて、一致団結してお前を追いかけているぞ!このままじゃあ吸収される!」

後ろを振り返るマックス・・・

「・・・何あの集団!?怖い・・・助けて~~、捕まる~~」

 下り区間で差が縮まる!!このままでは最終コーナー立ち上がってから逆転されるぞ。

そして、先頭で最終コーナーに突っ込むマックスに続いてメイン集団も突っ込んでいく。

 必死に逃げるマックスに、メイン集団から2人のスプリンターが飛び出してきた!!!猛然とマックスに襲い掛かってくる!

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 一人で全力で逃げ続けたマックスにはもはやゴールスプリントで競り勝つ力は残っていない。

「や、やられる!!」

 風前の灯のマックスに打つ手なし。ブーストでも使って加速しない限り逆転負けしてしまう(>_<)