アイツが天国から還ってきた 夢幻のマッドマックス Millennium編

The goal of all life is death. 凄惨な事故による心肺停止状態から仮初めの命を与えられ、アイツが天国から還ってきた。アイツは夢か幻か?だがアイツは残り少ない時間を自ら削って死に急ぐ。これはアイツの命が燃え尽きて灰になるまでの記録である。この命の終焉の刻まであと僅か・・・全ては時の中に・・・

九州チャレンジサイクルロードレース#8 【マッドマックスとクマモンズの友情】

 レース中には様々なドラマが展開される。

 先頭集団から千切れてしまった場合、単独でブリッジを架けるのは至難の業だ。しかし、同じ目的を持った選手と共闘することができれば先頭集団に追いつける可能性は飛躍的に向上する。

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トム「マックス、そろそろ交代しよう!」

先頭を牽いていたマックスに並走してきたトムが交代を申し出てくれた。

マックス「サンキュー!トム」

そのままトムが先頭、その次にジェリーが続き、その後ろにマックスが入っていく。あとはこれをローテーションしてスピードが落ちないように走り続けるのだ。

トムは自ら平坦が速いと言うだけあって物凄いパワーでグイグイと牽いてくれる頼もしい味方だ。

 そして今度はジェリーが先頭を牽いてくれる。

ジェリー「先頭集団との差はどのくらいだろう?」

トム「わからないな・・・とにかくぶっ飛ばしていくしかないだろうな」

マックス「ああ、うかうかしていると失格になっちまう!とにかく行ける所まで全力で行こうぜ!トム!ジェリー!」

そうして皆で励まし合いながらペースを維持して走り続ける。すると、また単独走行している選手の姿が見えてきた。

トム「お!また一人見つけたぜ!一気に追いつこう!」

そう言うとトムが猛然とダッシュして、あっと言う間に単独走行中の選手ガティ(仮名)に追いつくことが出来た。トムは本当に頼もしい仲間だ。

 ガティに追いついたのはいいが、どうもトムの様子が変だ。共闘を申し入れる様子がない。何かありそうだ・・・。

 ガティを先頭にマックス、トム、ジェリーの4人で走っていると、最初の上り区間が近づいてきた。

 距離は短いがかなりキツイ斜度の上り坂をガティは物凄いスピードで上っていく。ガティは平坦も速いが、上りはそれ以上に得意のようだ。

 ガティのドラフティングに入ったままマックスも上っていくのだが、どうも楕円ギアの回し方が理解できておらず、クランクがグワン!グワン!して、上手くペダルを回せない。インターセプターのシェイクダウン不足のつけがこんなところに回ってきたか・・・。

 上りが終わると今度は下り坂となり、右に急カーブしている。ガティはここもハイスピードでクリアしていく。コーナー出口で少し離れてしまったが、直ぐにケイデンスを上げて再び後ろに付くマックス。

マックス「トム!ジェリー!ついてきているな?・・・・あれ?2人が居ない!

 気になって後ろを見ると・・・トムとジェリーがついてきていない!どうやら上り坂で千切れてしまったようだ。

 ガティは更にペースアップしていく。トムとジェリーを待つ気はないようだ。そして最大の激坂区間に突入するガティとマックス。

 ガティと一緒に激坂を上りながらマックスは悩んでいた。

 平坦区間では率先して先頭を牽いてくれたトム、そして励まし合いながら一緒に走ってきたジェリーを置いて俺だけ先に行って良いのか?あんなにも頑張ってくれたトムとジェリーを見捨てて・・・

 そんな心理状況の中、頂上に到達したガティとマックス。苦しい激坂が終わりトンネル区間に入る直前、マックスは後ろを振り返ると一瞬ペダルが止まりスローダウンする。

 ガティは後ろを振り返ることなくそのまま加速していく。マックスはガティを見送った後、再びペダルをクルクル回して単独巡航を開始する。

 バンジージャンプ橋を渡り、ホームストレートを孤独に走るマックス。後ろをチラチラ見るがトムとジェリーの姿は見えない。遥か彼方にガティの後ろ姿が見える。

そして第一コーナーを曲がる直前、再び後ろを振り返ると・・・

マックス「・・・来た!きた!!キターーー!!!トムとジェリーだ!!!」

 小躍りしたい気持ちを抑えて橋を渡り、下り区間を巡航するマックス。しばらく単独走行を続けるマックスに突然声がかけられる。

トム「へへへ~お待たせしました~♪」

 振り向くとトムの笑顔が見えた!そしてジェリーも一緒だ!2人で追いついて来てくれたのだ!

マックス「待ってたよ!トム!ジェリー!

トム「ところで・・・ガティはどうした?」

マックス「いや~面目ない!あの人上りが速すぎてあっという間に置いて行かれたよ!さあ、また3人で走ろう!!」

トム「おお!平坦なら俺に任せろって!マックス!」

 こうしてトムとジェリーとマックスの列車が再び追走し始めたのである。

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