アイツが天国から還ってきた 夢幻のマッドマックス Millennium編

The goal of all life is death. 凄惨な事故による心肺停止状態から仮初めの命を与えられ、アイツが天国から還ってきた。アイツは夢か幻か?だがアイツは残り少ない時間を自ら削って死に急ぐ。これはアイツの命が燃え尽きて灰になるまでの記録である。この命の終焉の刻まであと僅か・・・全ては時の中に・・・

九州チャレンジサイクルロードレース#3 【入ってますか?自転車傷害保険】

 試走が終わり他のカテゴリーのレースが開始された。ホームストレート側にあるレース運営会場付近には大勢の観客が集まっていた。選手がホームストレートへやってくると大歓声で迎えられる。

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その様子をコースの片隅からぼんやり眺めるマックスとモンティナ。

マックス「ところでスカーフェイスはどうしたんだ?」

モンティナ「バイクで出ていったままだよ」

マックス「あいつは何をしに来たんだ」

 そんなとき、集団から千切れて一人旅または少数の集団でホームストレートへ戻ってくる選手が次々とやってきた。観客から声援を受けてペダルを回し続けるがやはり厳しい表情だ。

マックス「頑張れ!まだ1分差だぞ!追いかけろ!!」

モンティナ「このレース、トップから5分差になると失格になるから気を付けろよ、マックス」

マックス「一人旅は嫌だな・・・」

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 周回を重ねるごとにトップとの差は開いていく。そしてレッドフラッグを持った運営スタッフがホームストレート上に待機しはじめた。

そしてホームストレートへ戻ってくる選手にレッドフラッグを振ってピットへ入るように促す。せっかくここまで走ってきたのにゴールすることなくレース終了・・・どの選手も悔しそうな表情でピットへ戻っていく。

 このロードレースは一般公道を封鎖しているので一般道路利用者への配慮のためにDNFとなるのだ。

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 マックスがエントリーしているエキスパートのスタート時間が近づいてくる。出走サインをしてバイクを広場に並べるマックス。

 そして、コースクリアが確認された後、全選手が揃ってコースイン。スタートラインまでゆっくりと進んでいく。

 そんな時、スタートライン側の歩道に居たスカーフェイスがマックスに声をかけてきた。いったいどこへ行っていたのだろう・・・。

スカーフェイス「マックス、スタートする前にひとつ確認しておきたいことがある」

 何だかんだで面倒見の良いスカーフェイスのことだ。きっと俺をリラックスさせるために声をかけてくれたのだろう。

マックス「何だよ?」

スカーフェイス「お前、自転車傷害保険には加入しているか?

マックス「ああ、去年の4月に契約更新してるよ」

スカーフェイス「内容はどんなのだ?」

マックス「保険の内容?普通の死亡保険、傷害保険、入院時給付金、高度障害時の補償、休業補償・・・くらいか。」

スカーフェイス「よし、それなら何か起きても安心だな」

マックス「・・・・・・・・・・・」

スカーフェイス「何かあったら俺が骨を拾ってやるから死ぬ気でペダルを回して来い」

マックス「・・・・・・・・・・・」

スカーフェイス「どうしたマックス、死にそうな顏してさ」

マックス「・・・やっぱり俺、棄権しようかな

スカーフェイス「今更何言ってんだよ、もうスタートラインに並んでるんだぞ。できるわけねーだろ」

場内アナウンス「スタート1分前!スタート1分前!!」

マックス「ああ!!ちょっと!あの、俺、お腹の調子が・・・今日はやめとこうかなと・・・」

 マックスの悲痛の叫びはスタッフには届かない。

 スタート直前に棄権したくなったマックス。もう最初から波乱万丈のレースの予感しかしない。

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そしてマックスの不安を余所にレースはスタートしたのである。