【The goal of all life is death.】刹那に生きる者
【フロイト】
The goal of all life is death.
あらゆる生あるものの目指すところは死である。
既に陽は沈んでおり、街は暗闇に包まれ街灯には明かりが灯っている。
そんな時、暗闇の中から不意に声を掛けられる。
「やれやれ。レースが終わってから5時間も経ったら戻ってくると思っていたのに、随分と待たされてしまったぜ」
街灯の向こう側の暗闇から、ゆっくりと歩いてくる人物が居る。
マックス「・・・・・・」
この声の人物をマックスは知っている。
声の方向を見つめるマックス。
その声の主が街灯の明かりの下に現れる。
「やあ、久しぶりだな。マックス」
マックス「お、お前は・・・」
この顔は覚えている。
覚えているのだが・・・何かが違う気がする。
覚えている人物とは、どこかに違和感を感じてとっさに名前が出てこない。
「ん?どうしたんだ?まさか俺のことを忘れてしまった・・・とか?」
マックス「・・・スカーフェイス?」
スカーフェイス「フフッ、元気だったか?いや、あまり元気じゃあなさそうだな」
マックス「お前、いったい今までどこで・・・」
約1年前に突然マックス達の前から、何も言わずに姿を消したスカーフェイス。
そのスカーフェイスが目の前に居る。
スカーフェイスには聞きたいことが山ほどある。
スカーフェイスの身に何があったのか?
この1年間どこで何をしていたのか?
そう思って声を出そうとした時・・・ 初めて気づいた。
スカーフェイスの首と右手に大きな傷跡があることに。
マックス「お前・・・その首と右手は・・・いったい何があったんだ?」
スカーフェイス「ん?ああ、これか?事故って死ぬ一歩手前までいったんだがな。首の皮一枚で繋がって、なんとか死なずにすんだのさ。右手なんて完全に捥げちまったからな。それを無理やり繋げてもらったんだぜ」
その傷跡を見ると、本当に死んでいても不思議ではない程の大怪我だったことがわかる。
右手は手首を一周する縫合痕が残っている。本当に千切れて・・・捥げてしまったのだろう。
マックス「詮索はしないが・・・一つだけ頼みがある」
スカーフェイス「借金以外の頼みなら聞くだけ聞いてやるぜ」
マックス「少しは自分の命を大切にしろ・・・いや、大切にしてくれ・・・頼む」
昔から思っていたことだが、スカーフェイスの生き方は捨て身過ぎる。
自分自身の命を捨て駒としか思っていない節があるのだ。
スカーフェイス「マックス・・・だが断る!!俺のモットーは、いつ死んでも悔いのないように刹那に生きるってことはお前も知ってるだろ?」
わかっていた。
スカーフェイスが生き様を変えるはずがないということは、誰よりもマックスが一番良くわかっていたことだ。
にもかかわらず・・・無駄だとわかっているのに珍しくマックスが食い下がる。
マックス「ああ、お前のその生き方に共感して、俺もいつでも死ねるように、今に・・・刹那に生きているからな。だからこれ以上お前には何も言えない。だけど・・・理由はどうあれ・・・」
努めて見ないようにしてもスカーフェイスの首と右手の傷跡に視線が動いてしまう。
そしてスカーフェイスの顔を見ることなく・・・俯きながら話しかける。
マックス「理由はどうあれ・・・俺は・・・お前には生きていて欲しいんだよ・・・」
スカーフェイス「フッ、約束はしないが覚えておくぜ。この怪我の治療とリハビリで故郷に戻っていたんだ。最近になって何とか動けるようになったので帰ってきたんだが・・・今はどうやらお前の方が重症のようだな」
マックス「俺は怪我なんてしていないぞ」
スカーフェイス「精神の方が病んでると言ってんだぜ。まったくどうしようもない奴だな、お前は」
マックス「・・・スカーフェイス」
どうやらスカーフェイスはいろいろと事情を知っている様子だ。
マックスはいろいろなメディアを使って情報発信しているので不思議ではないのだが。
スカーフェイス「ということでだ!待ちくたびれて腹も減ったことだし何か食いに行こうぜ!勿論、お前の奢りでな!!」
マックス「・・・仕方ないな。俺はいつも金が無いんだからな。ちょっとは手加減しろよ?」
スカーフェイス「オッケー!オッケー!!高いメニューをガンガン注文してやるぜ!!」
マックス「いいさ、今日だけな。ところでモンティナには会ったのか?」
スカーフェイス「それがさ!ちょっと聞いてくれよマックス!!・・・まあ、後で食いながら話してやるよ!早く行こうぜ!」
【スカーフェイス】
左頬に古傷があることから自らこのコードネームを名乗る豪快な野郎。
あらゆる物事に対して常にアッサリ、サッパリしており、細かいことは全く、完全に、微塵も気にしない大雑把な性格。
マックスのコーチ兼師匠とも言うべき存在であり、目玉焼きにはリアルで刺身醤油をかけるという変態。
スカーフェイス、カイン、マックスの3人は過去にパーティーを組んでいた時期があり、彼方此方に遠征を繰り返しては「血の雨」を降らせていたらしい。
ブログの中では最も人気が高く、しかも不思議なことに女性ファンが多かったという意味不明の怪現象が起こっていた。
ある日を境に突然みんなの前から姿を消して音信不通となり、その生存が疑問視されて現在に至る。