アイツが天国から還ってきた 夢幻のマッドマックス Millennium編

The goal of all life is death. 凄惨な事故による心肺停止状態から仮初めの命を与えられ、アイツが天国から還ってきた。アイツは夢か幻か?だがアイツは残り少ない時間を自ら削って死に急ぐ。これはアイツの命が燃え尽きて灰になるまでの記録である。この命の終焉の刻まであと僅か・・・全ては時の中に・・・

【再会】マックスのプライドが劣勢の波に沈んでいく・・・

西日本ロードクラシックに参加するために、先週に続いて広島県中央森林公園へ遠征することになったマックス。

天気は快晴。

快晴すぎて気温がとんでもないことになるという予想である。

レースのスタート時刻は前回よりも1時間30分遅くなっており超過酷なサバイバルレースが展開されるだろう。

果たしてマックスは生きて帰ることができるのか?

 

 

午前4時

最近は休日の度に奇妙な時刻に行動開始するマックス。

恐らく近所からは変人だと思われているに違いない。

いや、とっくの昔から変人だと思われているから大丈夫と言った方が良いのかも知れない。

先週のロードレースではスローパンクでリタイヤしたためそのリベンジと意気込んでいるマックスだが、今回は普通にパンクして落車して、全身がグチャグチャになる可能性も否定できない。

先週も結構暑かったのだが、今回はそれを更に上回る予報となっている。会場の気温は恐らく35℃くらいまで上昇するだろう。しかも、先週のレースはスタートが8時だったのだが、今回は9時30分スタートということでさらに暑さが増す・・・というか熱中症で倒れるレベルになるだろう。

 

マックス「マックス一番乗り~♪」

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チームから参加するのはシロッコ、ガードナー、マックスの3名である。

因みに、シロッコプロチームに所属していたこともある選手兼コーチでありチーム内最強の猛者だ。

受付を済ませてからウォーミングアップを開始する。先週はスローパンクしたリアのチューブは勿論交換済である。

マックス「ウォーミングアップと言ってもな・・・暑過ぎて動きたくないぞ」

既に気温はグングン上昇しており日陰から出る気になれない。

 

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ということで、ほとんどウォーミングアップすることなくレース開始時刻を迎えるマックス。

当然、試走もしていない。ここで 試走していたら恐らく疲れてレースに支障が生じていただろう。 

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 スタートラインに並ぶガードナーとマックス。別カテゴリーのシロッコは補給を担当してくれる。

ここで致命的なミスをしてしまうマックス。

この日のために少し大きめの650mlのボトルを2本購入したのだ。

このボトル2本あれば十分だろうと判断したのだがこれが後に大間違いだったことに気付くのである。

今回はローリングスタートだ。

下り区間が終了した時点でリアルスタートとなる。

このため全選手が落ち着いた様子でスタートすることとなった。

ローリングスタートで先導車がゆっくりと下り区間を走り、その後ろを選手たちが付いていく。

 

しかし・・・

 

先導車が想像以上にかなりスローペースなのだ。

しかも、何故か加減速があるため選手たちもブレーキと加速を繰り返すことになる。

マックス「最初の周回で握力が無くなっちまうな・・・」

とボヤキながらもついていく。

そしてレッドフラッグがブルーフラッグに変わり、リアルスタートとなった!

 

ガチャン!ガチャン!!

 

全選手がシフトアップして一斉に加速していく。

もちろん、マックスもニールプライドのギアを上げて追走開始!

小さな下り、上り、平坦を織り交ぜた区間を走り抜ける選手達。今のところ様子見でアタックはかからない。

 

マックス「もうすぐ三段坂が迫ってくるな・・・よし」

 

三段坂に備えてコッソリ、ヒッソリとポジションアップを狙うマックス。

長いストレート区間で集団が横に膨らんだ時、イン側ギリギリのラインを使ってスルスルと加速して集団の前線まで上がることに成功。

案の定、上りでアタックが始まるが、落ち着いて追走して集団に残るマックス。

その後も集団中央をキープして走り続け、無事にコントロールラインを通過することに成功する。

 

マックス「問題はここからだな・・・集団中央部分より後ろに下がるのはNGだ」

 

ということで、ポジションを落とさないように気を付けながら下り区間を走るマックス。

右に、左に、ヒラヒラとバイクをバンクさせながら超高速で下り坂を走る選手達。

ニールプライドのホイールにはレース用のハイグリップタイヤを履かせているので高速コーナリングでも全く問題ない。

 

マックス「よし、この調子で2周回目もいくぜ」

 

1周回目でウォーミングアップが完了して調子が良くなってきたマックスである。

そんな時・・・

 

プシューーーーーッ!!!!

 

パンクの音がコースに響き渡る。

そのパンクの音は、マックスから見て前方から聞こえてきた。 

 マックスの前方には・・・下りの左コーナーが見える。

バイクが前に進んでいくにつれて左コーナーの先が見えてきた。

そこには・・・

 

左コーナーの後半部分で2名の選手が落車しているのが確認された。

 

マックス「落車!」

 

後ろの選手に注意喚起すると同時に、減速と回避行動に移行するマックス。

 

だがしかし!!!

 

コーナーでの落車ということで、選手2名とバイク2台がイン側からアウト側にズルズルと滑って移動しているのだ!

 

マックス「うげっ!?

 

 思わず下品な悲鳴を上げるマックス。

回避した方向へ選手が移動してくるのだ。

衝突する!?というギリギリのラインでなんとかバイクをコントロールして回避することに成功。

 

ホッとするのも束の間、ほとんど停止状態となるまでバイクのスピードを落としてしまっており、その間にも落車前方の集団との距離はグングンと開いていく。

 

 マックス「しまった!!

 

ということで、前方の集団にブリッジをかけるためにフル加速するマックスとニールプライド。

他の選手もダンシングで全開加速していく。

 

マックス「ち、千切れて・・・たまるか!!

 

もう後先考えずに脚を使ってなんとか前方の集団に追いつくことに成功する。

成功したのだが・・・追いつくまでに脚を酷使しており、心拍も上がり切っている。

そして悪いことに目の前には三段坂が迫ってきている。

そして全選手によるアタックが始まる!

 

マックス「ま、まずい!!」

 

ダンシングを使って加速するマックスだが、既に脚にダメージがあるため継続不能。シッティングに戻してケイデンスを上げまくるが焼け石に水・・・。

三段坂の半ばで力尽きて集団からズルズルと落ちていくマックス。

三段坂を 上り切るころには集団から20メートル程度離されてしまう。

 

 マックス「・・・・やられた」

 

集団が遠ざかっていくのを後ろから見つめる。

  

結局、最後の5周回目に入ることなく4周回でレース終了。

先週に続いて完走すらできないまま、肩を落として一人帰路につく。

マックスのプライドが劣勢の波に沈んでいく・・・

 

落ち込んだまま自宅前まで戻ってきたマックス。

道中、完走すらできない自分自身の不甲斐なさに嫌気がさして現役引退まで考える始末だ。

 

マックス「・・・・チッ・・・」

 

何に対してイライラしているのか?

答えは自分自身が一番良くわかっている。

考えれば考えるほど、自分自身が嫌になる。

既に陽は沈んでおり、街は暗闇に包まれ街灯には明かりが灯っている。

そんな時、暗闇の中から不意に声を掛けられる。

 

「やれやれ。レースが終わってから5時間も経ったら戻ってくると思っていたのに、随分と待たされてしまったぜ」

 

街灯の向こう側の暗闇から、ゆっくりと歩いてくる人物が居る。

 

マックス「・・・・・・」

 

声の方向を見つめるマックス。

その声の主が街灯の明かりの下に現れる。

 

「やあ、久しぶりだな。マックス」