広島トレーニングレース2020 #5 【俺、このレースが終わったら結婚するんだ・・・】
3周回目へ突入したマックスとニールプライド。
天気は曇っているためさほど暑くはない。
しかしボトル2本ではギリギリとなりそうな予感がする。
マックス「まだ3周回目かよ・・・最後まで走り切れるか自信が無くなってきたぞ・・・」
そして最後の激坂がやってきた。
マックス「もうウンザリなんだが・・・ちょっとペースを落とすか」
気力が尽きてペースダウンしようと思っていたマックス。
そこへカメラスタッフがカメラを構えるのを見つけた。
途端にだらけた雰囲気を払い除けて、真面目な顔でペダリングを始める。
マックス「うおおおお!!!」
カメラスタッフ「がんばれ!もうちょっとだ!」
マックス「おう!」
ギャラリーの前だけは頑張るマックス。
そしてカメラスタッフを通り過ぎて再びペースを落としてやろうと思っていたら・・・。
カメラスタッフ「マッドマックス~ファイトーーーー!!!」
マックス「ええっ!?・・・お、オッケーーーー!!!」
またもやフルネームで応援されてビビッてしまうマックス。
マックス「俺ってば、ひょっとして有名人?」
直ぐ調子に乗るマックス。
行き当たりばったり、適当、とりあえず、なんとなく、まあいいか、というノリで名乗った【マッドマックス】というコードネームですが、ここまで浸透すると嬉しいものです。
マックス「決めた・・・俺、このレースが終わったら実名からコードネームに氏名変更するんだ。市役所に届け出書を出してやる」
ついに発狂してしまったマックス。
そもそも、名前がMADMAXな時点で最初から発狂しているようなものなのですがね。
まさに、何を今更ってところです。
マックス「しかし、市役所はすべてカタカナで受理してくれるのか?それとも適当な漢字を付けてみるか?魔怒摩楠・・・いや、なんか変だな。大昔に流行った夜露死苦みたいでカッコ悪い。そもそも、マッドが苗字で、マックスが名前で良いのだろうか?いやいや、ここはアルファベットで・・・」
という氏名変更のことを割と本気で考えながら単独で走り続けていると、いつの間にか最終ラップに入っていたのである。
もちろん、この間に先頭集団に-1Lapされてしまいましたので最終ラップは7周回ということになります。
マックス「周回遅れの最終ラップか・・・悔いが残るレースだが・・・ようやくこの地獄のサバイバルレースが終わる。最後まで落車もなく、完走できそうだ」
最終周回ということで気分が楽になる。
あとは普通に流すだけでゴールすることができるのだ。
ホームストレートが終わって山のピークを過ぎ、下り区間に突入するマックス。
マックス「やれやれ、どうやら無事に完走できそうだなあああああああああ~~~~!!!!」
突然誰もいない山中のサイクリングコースに野郎の悲鳴が轟く!!!
コース上には巨大な角を生やした野生の鹿が待ち構えていたのである!!
それもマックスとの激突コース上に堂々と立ちはだかっているではないか!!
マックス「なぜこんなところに鹿が・・・?そんな馬鹿な?」
残念なことに馬は見当たらない。
いや、それどころではないのだが。
◆走馬灯◆
レース数日前の出来事
マックス「モンティナ、話があるんだ」
モンティナ「改まってどうしたんだ?借金以外の話なら何でもいいぞ」
マックス「実は俺・・・」
モンティナ「何だ?言ってみろよ、俺にだけ」
マックス「俺、このレースが終わったら・・・結婚するんだ」
モンティナ「お前、また酔ってるな」
マックス「俺は素面だ」
モンティナ「酒にじゃない。血の色をした夢にだ」
マックス「・・・」
モンティナ「夢はいつか覚める。覚めた後、お前はいったいどうする気だ?」
マックス「それは・・・」
モンティナ「そもそも葬式と違って、結婚は一人ではできないんだぜ?」
マックス「・・・わかってるよ、そんなこと・・・」
◆走馬灯◆
マックスが鹿を発見してからこの間僅か0.05秒!!
まさに蒸着並みの速さである。
マックス「死ぬ・・・死ぬな・・・こりゃあ・・・」
死を覚悟する。
思えばマックスの人生は辛い苦難の日々ばかりであった。
マックス「まあ、いいか。もう、この世に思い残すこともないし・・・これで楽になれる・・・今度こそ本当にサヨナラだ」
その時である!
コース上の巨大な鹿が反転して山の方へ駆け出していったのだ。
マックス「・・・・・・」
何が起きたのか理解できないマックスであった。
マックス「俺・・・生きている・・・」
複雑な気持ちが入り混じったままゴールするマックス。
結局モンティナの予想通り-1Lapされて悔いの残るレースだったのだが、鹿との激突を回避して無事に生きてゴールできたことにホッとするマックスであった。
そして、表彰式が終わるとリザルトも見ないまま暗闇の荒野へと姿を消したマックス。
その後、マックスの姿を見たものは誰もいない。
モンティナ「そういや、お前・・・レースの数日前に俺に何か言ってたよな?」
マックス「え?俺が?何か言ったかな?」
モンティナ「確か・・・映画の死亡フラグのようなセリフだった気がするんだが・・・思い出せん」
マックス「あっははは、なんだそりゃ?お前も忘れっぽい奴だな」
モンティナ「そのセリフ、そっくりお前に返してやるよ」
マックス「フフフ」
モンティナ「ハハハ、このまま忘れてやるから晩飯はお前の驕りだぞ」
マックス「はいはい。何でもどーぞ」