アイツが天国から還ってきた 夢幻のマッドマックス Millennium編

The goal of all life is death. 凄惨な事故による心肺停止状態から仮初めの命を与えられ、アイツが天国から還ってきた。アイツは夢か幻か?だがアイツは残り少ない時間を自ら削って死に急ぐ。これはアイツの命が燃え尽きて灰になるまでの記録である。この命の終焉の刻まであと僅か・・・全ては時の中に・・・

【Cape Cod編】血の色をした夢 「雨の日はみんな地面を見るのね」

マックス「と、いうことなんだ」

モンティナ「・・・またか・・・」

マックス「ん?」

モンティナ「またお前は酔っているな」

マックス「馬鹿言え、俺は素面だ」

モンティナ「酒にじゃない。血の色をした夢にだ」

マックス「・・・」

一瞬、ハッとした表情を見せるマックス。

モンティナ「昔、忠告しただろ。夢はいつか覚めると。夢から覚めた後、お前はいったいどうする気だ?」

マックス「・・・わからない。覚めた後に考えるよ」

モンティナ「お前がそこまで生きているかわからないから今聞いてるんだぜ」

モンティナから視線を逸らし考え込む。

モンティナ「もうケリはついた。お前の・・・」

マックス「・・・・」

 

 

数年前

ある事件によってアッシュの心は壊れてしまった。

もう修復できないほどに。

Identity crisis

自己認識の危機

 

生きる気力を失い、ただ座して死を待つ日々を送る。

 それはある日曜の昼下がり。

前日からずっと降り続く雨・・・今もその勢いは弱まらない。

そんな雨の日、傘も持たずに一人で街を歩き続ける。

既にずぶ濡れになっている。

どれくらい時間が経ったのだろう。

ずっと雨に濡れていたため体温が下がり、身体の震えが止まらない。

公園を歩いていると管理事務所が目に入った。

そこでようやく雨宿りという行為を思いつく。

管理事務所の軒先で一人雨宿りをする。

アッシュ「・・・・・」

起きているのか眠っているのかわからない虚ろな目で地面の水溜まりを見ている。

雨粒によって水溜まりに次々と波紋が出来ては消える。

ただ、その様子をじっと見つめる。

 

「雨の日はみんな地面を見るのね」

 

不意に声を掛けられる。

アッシュ「・・・そういえば・・・そうだね。今まで考えたこともなかった・・・」

声を掛けられた方を振り返るアッシュ。

そこには傘を差し出したまま静かに佇んでいる人が居た。

アッシュ「俺に何か?ジェニファー」

ジェニファー「何してるの?こんなところで」

アッシュ「雨宿り。雨は嫌いじゃないし」

ジェニファー「そんなにブルブル震えながら?風邪ひくよ?」

アッシュ「いいんだよ・・・もう」

あの事件によって、生きる気力を失ってしまった。

ただ死んでいないというだけであり、積極的に生きることを放棄してしまっている。

何もかも、もうどうでもいい。

そう思っていた。